皆様おはようございます。今朝は御津郡建部町日蓮宗成就寺住職広本栄史が放送いたします。
私の住む建部町では、今「たけべの森」で本日8日から16日まで、『はっぽね桜まつり』をやっています。今を盛りに百種類、1万5千本の桜が咲き乱れております。いろいろなイベントもあります。皆様お誘い合わせ、是非「たけべの森」へ「こられぇよ」と岡山弁でご案内しております。
また本日4月8日は仏教の生みの親、お釈迦様の誕生日です。岡山市仏教会では本日午後1時より3時まで後楽園の鶴鳴館で法話をいたします。いろいろなイベントもいたします。そして甘茶をさしあげ、福引もあります。皆様お誘い合わせ是非お参りくださいますようご案内いたします。
その昔インドのカピラ城で、お后のマーヤ様の身体に天から白い象が降りてきて中に入った夢を見られました。その後花咲き匂うルンビニ園の花園で4月8日お誕生になったのがお釈迦様でした。天と地を指差して「天にも地にも我一人」と力強く発せられました。そして成長されるにつけ、世の無常を感じられるようになりました。ある日のこと、畑で農家の方が鍬で掘り返された土の中で小さな虫を小鳥がつつく様子を見られました。鷹は小鳥をねらっている。猟師は鷹をねらっている。何故みんな仲良くできないのかと太子さまは悲しくなりました。そしてお城の四つの門の外で不思議なものを見ました。それは老人・病人・死んだ人でした。人は誰でも年をとり、病気にもなるし、死んでしまいます。北の門で見たものは立派なお坊さんでした。世の中に住む人たちがみんな仲良く幸せに暮らせる道を探そうとお考えになった太子さまは、静かな月夜にただ一人白い馬に乗ってそっとお城を抜け出し、山に入ってお坊さんになりました。
山に入った太子さまは、名高い学者を訪ねてみたり、自分の身体を苦しめて苦しい修行を続けました。続ける中に6年たちました。こんなやりかたでは無駄だと気付いて山を下りました。そして大きな菩提樹の下で、悟りを開くまでは二度とここを立つまいと心を固く決められて、静かに座って考えを続けられました。いろいろな悪魔に邪魔されましたが、悟りを開くことができました。そして立派なお釈迦様となられました。世界の夜が明けそめて、空に明けの明星が明るくキラキラと輝き世界の光になりました。そのお釈迦様の教えを一口で説かれたのが七仏通戒偈です。それは「諸悪莫作、諸善奉行、自浄其意、是諸仏教これなり」と言われています。「諸々の悪はなす莫れ、諸々の善を行いなさい、そしてその為には自ら自分の意を清くすること、これが仏様の教えなり」と。
それにつけても、現代社会はあまりにも事件が多すぎます。人間の姿はしておりますが心は犬畜生以下のような人が増えております。無抵抗な幼児をいきなり殺害したり、無抵抗な老人を打ち殺したり、いろいろな事件が多いのには心が痛みます。職を失い家賃が払えなくなって橋の下で野宿生活をしている気の毒な身体の不自由な人達に火炎瓶を投げつけて殺害した青少年たち、一体どのような家庭で育ったのでしょうか。お釈迦様は悪いことをしてはいけません、よいことをしなさい、そして自ら自分の心を清めること。この心を浄める修行が現代社会の中で、家庭の中で不足しているのではないかと思われます。日蓮宗では、毎日「南無妙法蓮華経」とお唱えし、自分の心を浄め、心の垢を取り除きながら生活いたしましょうとお願いしております。
そして毎日の生活のルールとして、五戒、すなわち、五つの戒を守りましょうと言われました。一、不殺生戒、殺さないこと。二、不偸盗戒、盗まないこと。三、不邪婬戒、みだらな男女交際をしないこと。四、不妄語戒、うそをつかないこと。五、不飲酒戒、お酒を飲んで人に迷惑をかけないこと。と厳しく戒められました。
ひとつ目、殺さないこと。日蓮聖人は「いのちと申すものは、一切の財の中の第一の財なり」。昔から命あってのものだねとか申しまして、命こそこの世の一番の財ものです。たった一つの尊い命、仏様は命のあらわれ、草も木も、鳥も魚もみんな命を大切にして生きている。厳しい自然の中に生き抜く命、力強い命、不思議な命、この命の尊さを仏様が教えてくださる。命を大切にする人間となろう。
二つ目は、盗まないこと。毎日毎日どこかで盗難、万引き、外国人による重機による銀行泥棒等、ニュースを聞くたびに驚きと恐怖を感じます。大智度論に盗みの罪として「持ち主は常にいかり、重ねて盗みを疑われ、悪人と友になり、賢い友人と遠ざかり、人相が悪くなり、官憲から罪を得る」とあります。人間社会の中にあって、所有のけじめは、人間らしさを維持形成するものです。正々堂々と生きることこそ仏の道なのです。
三つ目は、みだらな男女交際はよくないということです。現代社会ではそれによってエイズ問題等事件もたくさん起きています。お釈迦様は六方礼経に「夫は妻を尊敬せよ」と言い、そして夫と妻の義務に「不品行ならざること」として示しています。つまり、仏と道連れの心で異性間の人間関係を持ちたいものです。
四つ目は、うそをついてはいけません。天台宗の葉上上人は、現代人にこれひとつだけは守ってほしいものと言って「うそをつかないことかな」と言われました。確かに現代人は「うそ」に対するつつしみやはずかしさ、罪悪感を見失っているように思われます。うそを言わない、というだけでも自分の心の中で省みる力を持ったならば、そこに人間らしさ、心の強さを回復することができると思います。
五つ目は、酒をつつしむということ。老人から教わった中に、酒一杯人酒を飲む、酒二杯酒酒を飲む、酒三杯酒人を飲む、つまり酒に飲まれて、人の心に甘え、いじきたなさを呼び起こし、酒で失敗を繰り返し、人に迷惑をかける。適度の酒で我慢しましょう。大智度論に酒の過失を「財が尽き、病のもととなり、闘争のもととなり、恥を忘れ、人に尊敬されず、智慧が隠れ、得るべきものを失い、隠すべき人の秘密を軽々に語り、怠けによって事が完成せず、体力が衰え、容色衰え、人を尊敬せず、悪い友人ができ、賢者と遠ざかり、感覚に節度がなくなり、わがままになり、親族から遠ざけられ、信用を失い、悟りに遠ざかる」と言っています。
このように「戒」は日常生活のつつしみのことです。つつしみの行動の上に心の安らぎが持続されます。五つの戒は戒律の中でも特に基本的なものです。
人間の美しさを品性といい、自制心のある人柄を指します。考え深く、充分訓練された物腰や行動を取れる人のことです。怒りの縁にあっても、荒々しく怒らない人は、周りの人をもやさしくしてくれるものです。戒律とは、そうした人間のつつしみのことです。「律」とはその社会の約束事で、現代生活を営む上で何百という約束事を自由に使って私たちは生きています。仏様の教えを信じ、迷いから解放されるための「律」が五戒です。この五戒を守って人間らしく生きてまいりましょう。
今朝は建部町日蓮宗成就寺住職広本栄史が放送しました。