久しぶりに電車に乗りました。電車は少し混んでいました。高校生らしき男子が2人、席に座って大きなスポーツバックを床に置いていましたが、混んできたことに気づき、「じゃまになっとるよな」と言いながら、バックを股の間に引き寄せました。とてもすがすがしい感じがしました。
次の駅で、お年寄りが乗ってこられ、女性の前に立たれると、女性はすかさず席を譲られました。良い行為は、当人同士だけではなくて、周りの人にも心地よい気持ちを与えます。
ところが、一つ変なことに気づきました。女の人が譲ってあげた席のすぐ近くに、「ゆずりあいの席」が4席あり、3席が空いていました。そこには、「高齢者の方、障害者の方、妊娠中の方、赤ちゃんをだっこしている方などに席をゆずりましょう」という表示がされていました。これだけ混んでいて、空いた席が残っていることに、違和感があります。もしも、お年寄りの方が、最初からゆずりあいの席に座られたら、その女の人はそこに座っていられたのに…
でも、自分からゆずりあいの席へ座るのは、抵抗があります。元気な方が、積極的にゆずりあいの席に座り、困っている人に席を譲ってあげたらよいのでは…。でもそれでは、常に周りを気にしておく必要があるので、最初から座りたくないでしょう。
いっそのこと、全席をゆずりあいの席にしてしまうのはどうでしょうか? 皆さんがお互いに、ゆずり合えるという意識が持てたらいいですね。私は結構ですから、どうぞお座りくださいとゆずることは、無財の七施の中の床座施という布施行になります。自分に必要なものであっても、相手を思いやりゆずってあげることが、菩薩様の修行である布施行の精神です。
心の散歩道VOL.28(2013年発行)より
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